療育とはなに?発達障害のある子どもへの療育効果や内容、療育の施設とその役割を解説
発達障害または、発達障害が疑われる子どもは学習についていけないばかりか、さまざまな問題行動を起こすケースも少なくありません。
これらを改善するためには、「療育」および「発達支援」に取り組むことが重要です。
そもそも療育とは具体的にどのようなことを行うのか、期待される効果を解説するとともに、療育が受けられる施設の一例も紹介しましょう。
療育(発達支援)とは?
療育とは、さまざまな障がいをもつ子ども、および障がいの可能性が考えられる子どもに対し適切なサポートを行うことを指します。
社会生活を送るうえで障がいを持っていることは大きなハンデキャップになることも多いですが、そのようななかでも自立した生活を送っていけるよう、一人ひとりの状態や障がいの程度に合わせた支援を行います。
なお、本来の療育とは、身体的な障がいをもつ子どもに対する支援を行うといった意味で使われる言葉ですが、現在では発達障害の子どもに対するサポートでも使われるようになりました。
そのため、療育と発達支援は同じような意味としても用いられます。
厚生労働省では、発達障害が見られる児童・生徒への支援方針として「児童発達支援ガイドライン」を定めていますが、このなかで療育のことを以下のように定義しています。
『児童発達支援は、児童福祉法第6条の2の2第2項の規定に基づき、障害のある子どもに対し、児童発達支援センター等において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものである。』
療育(発達支援)の効果
発達障害をもつ子どもや、その疑いのある子どもが療育を受けることにより、どのような効果が期待できるのでしょうか。
上記でも紹介したように、大原則として挙げられるのが日常生活において必要な能力が身につくことです。
たとえば、相手の話す内容を理解し自分自身の意見を正確に伝えることや、自分自身がとった行動によってどのような結果に結びつくのかを体験させ、問題行動を抑制する力などを身につけられます。
発達障害の子どもは周囲から距離を置かれたり、いじめのターゲットになったりするケースが多く、それがきっかけで自分に自信をなくし、身近な人以外とのコミュニケーションに恐怖を覚えることがあります。
しかし、療育によって訓練をすることで、人とのコミュニケーションに喜びを感じられるようになり、次第に恐怖心が和らいでいくでしょう。
その結果、コミュニケーション能力が身につき、自己肯定感も高められるようになります。
療育(発達支援)の種類
一口に療育といってもさまざまな種類があり、その手法によって目的や得られる効果は異なります。
発達障害の子どもを対象とした発達支援のなかで、代表的な5つの種類を詳しく解説しましょう。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法とはCBTともよばれ、ネガティブな思考に偏りがちな子どもに対し、思考の偏りが生じないように訓練をする療育です。
子どもの短所に目を向けるのではなく長所をピックアップし、日頃の活動のなかでやりがいのある活動を優先的に取り組みます。
これにより、自信を取り戻しネガティブ思考から立ち直ることが期待できます。
TEACCH
TEACCHとは「Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children」の略称で、自閉症の子どもに対して行われている米国発祥の療育です。
自閉症を矯正するという方針ではなく、子ども一人ひとりの特性を見極めて長所を伸ばすような支援を行います。
これにより、子どもは自分自身を否定されていると感じることがなく、自分自身の優れている部分を客観的に理解でき、自信を取り戻し社会生活に順応できるようになります。
SST(Social Skills Training)
SSTは「Social Skills Training」の略称で、日本語に直訳すると「社会生活スキルトレーニング」という意味を指します。
特に発達障害や自閉症、ADHDといった症状をもつ子どもにとって、社会生活を送るうえでは対人関係のトラブルに発展することが少なくありません。
これを防ぐために、SSTでは子どもの特性に合わせてディスカッションやロールプレイなどの訓練を繰り返し、状況に合わせたコミュニケーションの方法を学びます。
応用行動分析(ABA)
応用行動分析は「ABA(Applied Behavior Analysis)」ともよばれ、子どもの問題行動を防ぐための療育です。
強化(良い結果が起こることで増加する行動)、弱化(悪い結果が起こることで減少する行動)、消去(結果に変化がないことで減少する行動)という3つの原理がベースとなっており、子どもが問題行動をとる原因やきっかけを分析することで対策が講じやすくなります。
箱庭療法
箱庭療法とは、子どもの潜在的な心理状態を理解しさまざまな支援につなげる療育方法です。
その名の通り、ひとつの箱のなかにおもちゃを自由に配置し、箱庭をつくることから「箱庭療法」とよばれます。
子ども自身が自分の気持ちや心理状態を言葉でうまく表現できないとストレスを溜め込んでしまうことがありますが、箱庭づくりを通して自己表現ができれば心理的なストレスが緩和されるとも期待できます。
>>勉強についていけない、集中できない発達障害の子のためにできること考えてみませんか?
療育(発達支援)を担っている施設とその役割
冒頭で紹介した厚生労働省の定義では、療育を行う施設として児童発達支援センターが例に挙げられていますが、これ以外にもさまざまな施設で療育が可能です。
どのような施設が挙げられるのか、それぞれの役割についても紹介しましょう。
通所型施設
療育を行う施設は大きく分けて「通所型」と「入所型」の2つがあります。
通所型施設では、主に日常生活で求められる基本的動作の訓練や集団生活における適応訓練などを行います。
なお、一口に通所型施設といっても、未就学児と就学児とでは対象が異なるほか、身体的な障がいがある子どもの場合は医療型施設で理学療法などのリハビリ訓練も並行して行われます。
- 児童発達支援(未就学児が対象)
- 放課後等デイサービス(就学児童が対象)
- 保育所等訪問支援
- 医療型児童発達支援
入所型施設
毎日施設へ通うのではなく、施設へ入所し療育が受けられる入所型施設もあります。
より重度の障がいをもった子どもが入所するケースが一般的で、通所型施設のような日常生活の基本的動作の訓練のほか、医療型障害児入所施設では病気の治療も並行して行われます。
- 福祉型障害児入所施設
- 医療型障害児入所施設
>>『うちの子は発達障害かも?学習に遅れがある子はどんな学校に行けばよい?』
まとめ
発達障害や自閉症といった障がいをもつ親にとって、子どもの将来は不安なものです。
これらの障がいをもった子どもの場合、一般的な子育てとは異なる専門知識が求められ、「今の子育てのままで大丈夫なのだろうか?」と戸惑うこともあるでしょう。
問題行動を強引に是正しようとすると、子どもに対して恐怖心や強いストレスを与えてしまい、より症状が悪化する可能性もあります。
発達障害や自閉症の子どもには「療育」および「発達支援」が重要であり、正しい専門知識をもった職員がいる施設へ入所させることも有効な方法といえるでしょう。
療育施設によっては見学を随時受け付けているところも多いため、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。